You never truly own a Patek Philippe.
You simply look after it for the next generation.
様々な広告媒体で1996年から展開されているパテックフィリップのジェネレーションズキャンペーン。
当サイトをご覧のみなさんには、刺さりまくりの広告ですよね(笑)
ロンドンの広告代理店 リーガス・デラニー社が、ラグジュアリーなどの安易な言葉を用いず、商品を所有する背景をペギー・シロタ、ピーター・リンドバーグなどの写真家を用いて、モノクロ写真のみで、明確に伝える。
“時を超越する、豊かで幸せそうな親子”の写真です。
クラス社会ではない日本では“空想の世界”とわかってはいても、家族、伝統、地位、経済状況などが満たされている理想像に憧れます。
時計界の頂点に君臨するパッテックフィリップは、有名人が身につけ、それに影響をうけ、憧れて購入するような客層を相手にしていません。
自社の顧客は、他者に影響されず、自らストーリーをつくるプライドを持っている人たちと理解し、ジェネレーションズキャンペーンを続けているのでしょう。
ヴィンテージの魅力のど真ん中は、つむぐストーリーだと思っています。
しかも、自分が次世代につなげるストーリーが最強です。
ピーター・リンドバーグの写真の世界とは程遠い親子でしたが、私も祖父、父親から引き継いだ時計を所有しています。
祖父からは1950年代後半から60年頃に製造されたオメガ
父親からは1980年頃に製造されたロレックス
祖父からの時計は、一旦祖母が引き継ぎ、その後私が21歳の時から所有しています。
大学の学園祭で騒いで竜頭がなくなってしまい、壊れた時計を神戸・三宮に住んでいた28歳時に心斎橋の仲庭時計店で修理し、今に至っています。
祖父からは近所に住んでいた貿易船の船長さんにヨーロッパ航海の時に買ってきてもらったと聞きました。
祖父は毎朝、掘り炬燵の定位置に座って、肘をつきながら竜頭を巻いていました。
シンプルな文字盤に、3時6時9時12時のハート型インデックスの遊び心(粋)のあるデザインがたまりません。
シンプルな時計なので、革バンドは少し派手目なカミーユフォルネのカイマンストラップを着けています。
次に換える時には、カーフストラップにしようと思っています。
父親からの時計は、他界後の5年前から所有しています。
父親は、この時計をスチールのデイトジャストをしていた義理の弟の影響で購入しました。
大学生当時「マイアミ・バイス」というアメリカのテレビドラマが放映され、日本でも人気だったのですが、主人公のドン・ジョンソンがフェラーリに乗り、父親と同じコンビのデイトジャストをしていました。
なんとか、父親の時計をパクれないものか。
そんなことばかり考えていました(笑)
父親は鳶職の親方で、現場でもどこでも、この時計をしていました。
1980年頃のデイトジャストの風防はプラスティック製で、風防は傷だらけです。
日表示など見えません。
無数の傷が家族を養った証のようにも見えて、大切に扱わないといけないと思ってしまいます。
また、ブレスレットの一つひとつのピースがユルユルになっているので、アンティーク専門の時計店に相談しないといけませんが、そんなユルユルさも愛おしく思えてしまうほどのストーリー馬鹿です(笑)
私が所有した時に、百貨店の正規ロレックス店で分解クリーニングの相談をしたところ、担当者にしれっと「風防はサファイアガラスに代わります」なんて言われたので、二度と正規店には修理の相談をしません。
ところで、将来、祖父、父親からの時計を息子は引き継いでくれるのでしょうか。
ストーリーは続くのでしょうか。
もちろん、続いてほしいのですが、実のところ私も最近はApple Watchをはめています。
生活様式や嗜好は変わるものです。
時を知るだけの道具が日常生活の必需品になる時代ではないかもしれません。
そう考えると、2つの時計のストーリーを息子に伝えなくてはなりません。
ただの時計ではなく、4代、3代と続くストーリーを。